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実家を売却して相続 兄弟半分ずつのはずが「弟にだけ相続税」

 兄弟姉妹が遺産を巡って骨肉の争いを繰り広げる──ドラマや映画の中の話と思う人も多いだろうが、家庭裁判所における遺産分割事件の件数は右肩上がりに増えており、今や身近な問題となりつつある。特に、トラブルの火種となりやすいのが「不動産」を所有していた場合。亡くなった親や夫の自宅に住み続けたい人と、家を売ってお金にしたい人がいれば、どうしても揉めることになるのだ。

 京都府に住む野村さん(仮名)は、3人の兄を持つ4人きょうだいの妹。父親が亡くなった後、残された不動産を4人の共有名義にして相続したが、3人の兄たちが亡くなり、親族は妹である野村さんと兄たちの嫁だけになった。相続した家に住んでいた長男の嫁は「ここに住み続けたい」と主張したが、離れて暮らす次男と三男の嫁は「早く売ってお金にして分けてほしい」と揉めているという。

「家と土地を合わせると、評価額は1億円近くにもなるそうです。兄が生きているうちに売ってお金にしてしまえばよかったと税理士から聞き、悔やまれてなりません。兄嫁たちと私はもはや血のつながらない他人。円満に解決できるとは思えず、途方に暮れています」(野村さん)

 都内の高級住宅地として知られる世田谷区では、こんなケースもあった。母親が亡くなって、実家の「路線価」は5000万円とされた。子供は兄と弟の2人きょうだいで、どちらも自分の持ち家があったので「実家は売却して分けよう」という話になった。弟は「5000万円で売れるなら半分の2500万円もらえればいいから、兄さんがやっておいて」とのこと。

 ところが、実際には路線価の2倍の1億円で売れたので、弟は当然「だったら5000万円欲しい」と言い出し、5000万円ずつ相続することになった。円満に思える話だが、そこでは終わらない。『トラブル事例で学ぶ失敗しない相続対策』著者で相続コンサルタントの吉澤諭さんが話す。

「相続税申告書の上では、兄が相続したのはあくまで5000万円の相続税評価額の家だけ。しかし、遺産分割協議は、話し合われたときの時価で決まります。家が1億円で売れて、約束通り弟に5000万円払ったことで、書類の上では兄は“相続した5000万円をまるごと弟に渡した”ことになり、相続税はゼロ。本当は兄も5000万円を手にしているのに、弟にだけ、相続税がかかってしまいました。売ってから分けるのではなく、はじめから2人の共有の財産として売って、“売れた額の半分ずつ”と決めておけばよかったのです」

 事前にやっておけばよかったと思っても、もう遅い。相続のトラブルはそんなケースであふれているようだ。