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なぜdocomoはahamoを作れたのか。業界の裏事情と、ahamoを追えたソフトバンクの考え方

(15GB~/180日)日本docomoプリペイドデータ専用SIM 長く使えば使うほど安くなるSIM 有効期限きっちり180日 更なる延長により無期限に 15GB+最大256Kbps 容量無制限 SIMピン付 リチャージによりGB単価160円台へ 4G/LTE対応

 これまで国民・政府が求めてきた「携帯料金の値下げ」に、大手キャリアが舵(かじ)を切り始めた。

 発端は、NTTドコモの新料金プランである「ahamo」の登場だ。携帯料金の見直しについて、従来は大手3社が「同時・同額・同様」の料金プランという“3同”で、業界の相場を守ってきた節がある。しかし、今回はドコモ側が一足早く業界の相場にくさびを打ち込んだ形になる。

 月額2980円で20Gバイトという価格設定だ。その代わり、顧客サポートが原則オンラインとなり、キャリアメールやファミリー割引が利用できないというデメリットもある。ドコモは本プランをメインブランドの料金プランと位置付けており、2021年の3月に提供を開始する。そして21年5月からはWeb上で簡単にプランを移行できるようになるという。

 この発表が与えたインパクトは、追ってKDDIが発表したauの新料金プランへの反応からも観察することができる。11日に提供を開始した同社の「データMAX 5G with Amazonプライム」は、2Gバイト以上利用する場合、月額4060円から利用できるというプランであった。

 タイミング的にahamoの直後であったこともあり、SNS上ではなかば誤解される形で他社並みの5Gプランが、“高い・分かりにくい”として炎上してしまった。9日には「さよならau」というワードがTwitterのトレンドに入ることになってしまったほどだ。

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●ahamoの布石は金融市場から見えていた?

 実は、ドコモがahamoのような価格破壊的な料金プランを発表する直前に、予備運動らしき行動を取っていたことをご存じだろうか。それは11月に行われたNTTのドコモに対するTOB(株式公開買付)である。この時から、TOBが携帯料金値下げの前兆であるとみていた市場参加者が少しずつ現れはじめた。

 そもそもNTTがドコモを完全子会社化するには、政府を納得させなければならない。なぜなら、NTTの筆頭株主は「財務大臣」であり、財務大臣という機関を抱える政府は携帯料金の値下げを業界に求め続けていたからだ。

 そもそも、NTTは巨大化による競争環境の歪みを是正するために分社化が行われてきた歴史がある。これまでの流れに逆行する動きとなる分、何らの大義名分のない合併を政府が呑むことはないだろう。しかし、これが「携帯料金の値下げのため」という大義名分がつけば政府の政策目標も達成できる。

 さらに、完全子会社化を行えば、携帯料金値下げに対してNTT側にもう1つのメリットが生じる。それが外部株主からの圧力から解放されることだ。

 ドコモの外部株主の悩みの種だったのが、政府による携帯料金値下げの圧力であった。政府からの「4割値下げできる」というコメントが報道されるたび、携帯三社の株価は下落を繰り返してきた。携帯料金の値下げは私たちにとってはメリットであるが、株主としては収益を低下させる要素であるため、たやすく容認できるものではない。しかし完全子会社化に伴い、外部株主がいなくなれば、もはやドコモの外から携帯料金の維持を直接株主の立場として要求することはできないのだ。

 TOB成立直後にahamoが発表されたことを踏まえれば、NTTによるドコモ買収は携帯料金値下げの布石であったとみてよい。

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●ソフトバンクはなぜ追えたのか

 一方で、ahamoの攻勢にうまく寄せてきたのがソフトバンクである。ソフトバンクは3社で最も遅い22日に、名称未定の「オンライン専用ブランド」をahamoと同じ21年3月にリリースすることを発表。20Gバイトで2980円と基本的な条件を揃えたうえで、LINEの通信データ量は「ノーカウント」とすることでahamoに対してエッジを持つかたちとなった。

 ソフトバンクはなぜahamoを追従したプランをすぐに出せたのだろうか。ここも企業行動からある程度予兆があった。

 ソフトバンクも、思い返せばZホールディングスの誕生が携帯料金値下げの布石だったのではないだろうか。Zホールディングスはヤフー・ジャパンと、買収したLINEを傘下に持つ形になる予定だ。どちらも格安SIM事業を行っており、LINEは今回の20Gバイト2980円プランで、ahamoよりもプラスアルファの提供価値を生み出す立役者となった。

 次に、ドコモが先行でプランを出したこともあるだろう。通常、競争という観点では後にプランを発表する方が有利となりやすい。価格で勝負するのであれば先行の企業が提示した額を少しでも下回れば業界最安値となるし、質で勝負するのであれば先行の企業が提示した条件が確認できた方が付加価値もコントロールしやすいからだ。

 携帯子会社のソフトバンクは上場しているものの、ソフトバンク1社だけ価格を維持してしまえば、たちまち競争に敗北してしまう。外部株主としては「値下げに抗うことが自らの首を絞めてしまう」という環境になるのを待つことで、ソフトバンクから外部株主を締め出さずとも料金値下げに追従できたのではないだろうか。

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●年明け以降はau・楽天の動きに注目

 ここで苦しいのはauと楽天モバイル、そして格安SIM各社である。

 auは、ドコモとソフトバンクのプランを確認したうえで、来年3月までにもう一段の値下げプランを提示できなければ、本格的に“さよならau”の動きが加速してしまうリスクがある。

 そして来年3月は、楽天モバイルの”1年間無料”キャンペーンが、順次終了するタイミングでもある。ドコモ・ソフトバンクの提示したプランに加えて、各社が何らかの付加価値を持ったプランが年明けごろにリリースされるかが直近の焦点となってくるだろう。

(古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士)